先日、日本眼科学会と日本眼科医会から意見書「小児のブルーライトカット眼鏡装用に対する慎重意見」が発表され、メガネ業界がザワつきました。この意見書はブルーライトカットレンズに対する「子供に推奨する根拠はなく、むしろ発育に悪影響を与えかねない」とするという内容です。この発表を受け、一人の眼鏡技術者として思うところを述べてみます。

なぜ今、このような意見書が?私なりの考察

推測ですが、今回日本眼科学会と日本眼科医会から、このような意見書がでたのは、360nmから400nmのバイオレットライトといわれる光が眼軸の伸長を防ぐ(=近視の進行を防ぐ)という研究が発表され、もしブルーライトカットレンズが、この有益な可能性のあるバイオレットライトまでカットしてしまうのであれば、近視進行を助長しかねないという懸念が生じているからと思っています。

個人的には

  • バイオレットライトのカットが近視に悪影響をあたえるのであれば、360nmから400nmの光線は紫外線(=UV A)として現在流通しているほぼすべてのプラスティックレンズが99%カットしているんですがそれはどう考えるの?
  • 「合併症の発症リスクが増えるといわれる-6.00D超の強度近視はともかくとして、最近の「全ての近視は病気!治療・予防すべき!」みたいな風潮もどうなの?」

とも思いますが・・・

多様化するブルーライトカットレンズ

「ブルーライトカットレンズ」と一言で言っても、その種類は多岐にわたります。初期のタイプ(例:435nm付近をカット)、HEV(高エネルギー可視光線:380nm~420nm)をカットするタイプ(例:東海光学ルティーナ)、あるいは夜間運転時の眩しさを軽減するために470nm~480nm付近をカットするタイプ(例:ニデックナイトドライブ)など、各レンズメーカーから様々な特性を持つレンズが開発されています。それぞれカットする波長域が異なるため、期待される効果や実際の見え方も異なります。

ブルーライトカットレンズの基本的な特性:色の見え方の変化

ブルーライトカットレンズを理解する上で最も重要なのは、ブルーライトが可視光線(目に見える光)の一部であるという点です。目に見える光の一部をカットするため、レンズを通して見ると、視界がわずかに黄色味を帯びて見えるという特性があります。これは、カットされる青色の補色である黄色が知覚されるためです。

具体的に説明しますと、ブルーライト(青い光)を遮断するレンズを使用すると、色相環上で青の反対側に位置する黄色がかって見えるようになります。

ブルーライト(青い光)をカットするレンズを通すと、
色相環における反対側である黄色っぽく物が見えます。

私自身も、プライベートでパソコン作業をする際にはブルーライトカット機能付きのレンズを活用しています。しかしながら、業務においては、お客様の肌の色合いや眼鏡フレーム、レンズカラーの繊細な違いを正確に捉える必要があるため、ブルーライトカットレンズの使用は控えています。

成人のお客様に対しては、特に長時間のパソコン作業をされる方、眩しさを感じやすい方、あるいはコントラストの感度が低下していると感じる方には、実際にトライアルレンズをお試しいただき、その効果をご自身で体感し、ご納得いただいた上でご使用いただいております。その一方で、医療従事者の方やデザイナーの方など、業務上、色の正確な識別が不可欠な職業の方々には、ブルーライトカットレンズを装用すると通常とは色の見え方が異なる可能性がある点を、事前に十分にご説明するようにしております。

なぜ、お子様にブルーライトカットを積極的にはお勧めしないのか

しかしながら、私はこれまでお子様に対してブルーライトカットレンズを積極的にお勧めしたことはありません。その最大の理由は、「すべてのものが本来の色とは異なって見えてしまう」からです。色彩感覚が発達する大切な時期に、常に色味の変わった世界を見ることは、果たしてお子様にとって良い影響を与えるのでしょうか。

お子様のメガネで本当に大切なのは、ブルーライトカットのような特定のコーティング機能よりも、正確な度数、適切なフィッティング、そして成長に合わせたこまめな調整ではないかと考えています。

とはいえ薄利多売の安売りチェーン店では数量を売らなければ経営が成り立たないため、手間と時間がかかる検眼やフィッティングより簡単に単価増につながるブルーライトカットに力を入れるのも経営的には理解できなくはないです….

業界の現状と、当店が目指すこと

もちろん、経営的な視点から見れば、特に薄利多売が求められる販売形態の店舗において、検眼やフィッティングといった手間と時間がかかる部分よりも、比較的容易に単価アップに繋がるブルーライトカット機能を推奨する動きがあることは理解できます。

それでも、私たちはお子様のメガネに関しては、医師の処方箋に基づき、質の高いフレームで丁寧に作製し、メガネが曲がってしまった際などにも責任を持ってフィッティング調整を行う、そのような信頼できるお店でありたいと考えています。

お子様の健やかな視力発達のために、保護者の皆様には、目先の機能だけでなく、長期的な視点でお子様に最適なメガネを選んでいただきたいと願っております。ご不明な点やご心配なことがございましたら、いつでもお気軽にご相談ください。

子供のころはありのままの色で見せたほうがいいのでは・・
左側は通常の見え方、右側はブルーライトカットレンズを通しての見え方(画像はイメージです)

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