ゲームが趣味の方、特に45歳以上で「目が疲れる…」と感じているゲーマーの皆さんへ。快適なゲームライフを送るためのメガネ選びについて、専門家である1級眼鏡技術者が分かりやすく解説します。

ゲーム市場の拡大と45歳以上のゲーマーの増加

近年、「ゲーム」を趣味にする人がますます増えています。これは、趣味の多様化や、コロナ禍による「巣ごもり需要」、ゲーム配信者の活躍などが影響しています(趣味に関するアンケート調査(2021年版) – 市場調査・マーケティングリサーチ会社のアスマーク (asmarq.co.jp))。


特に注目すべきは、45歳以上のゲーマーが顕著に増えているという調査結果です。(高齢ゲーマーの増加を示す新たな調査結果が明らかに – GamesIndustry.biz Japan Edition)。この記事を書いている私もゲーミングPCを所有しており、限られた時間ではありますが今でもゲームを楽しんでいます。

「ゲーミング〇〇」ブームと既存のゲーミングメガネの問題点

ゲーマー人口の増加に伴い、ゲーミングPCやゲーミングマウス、キーボードはもちろんのこと、ゲーミングドリンク、ゲーミング冷蔵庫、果てはゲーミング座布団まで、実に様々な「ゲーミンググッズ」が登場しています。

「ゲーミングメガネ」もその一つですが、現在市販されている多くのゲーミングメガネには、ある課題があります。

現在流通しているゲーミングメガネの主な傾向

  • 有名人とのコラボモデル: プロゲーマーや配信者とのコラボレーションによるもので、デザイン性が重視されています。
  • ヘッドホン対策型: ヘッドホンと併用しやすいように、メガネのつる(テンプル)の形状に工夫が凝らされています。
  • レンズコーティング重視型: 特定のコーティング(ネッツペックコーティングやHEVカットカラーなど)で、ゲームプレイ時の見え方の優位性を謳うものです。

これらのゲーミングメガネの多くは、デザインやコーティングに重点を置いており、「視力矯正」というメガネ本来の重要な役割や、特に45歳以上で顕著になる「目のピントを合わせる力の衰え」による見えづらさや疲れへの対策が不十分なのが現状です。

これからの時代に必要なゲーミングメガネとは?

目のピントを合わせる力、専門用語で「調節力」と呼びますが、この調節力は45歳以上になると特に衰えが顕著になります。そのため、ディスプレイが見づらくなったり、目が疲れやすくなったりといった深刻な問題が発生します。

一般的なゲーミングメガネでは、これらの年齢による目の変化に対応しきれていません。眼鏡技術者であり、私自身もアラフィフのゲーム愛好家として、この問題に特化したゲーミングメガネの必要性を強く感じています。

45歳以上の「ガチゲーマー」と目の疲労

この記事では、45歳以上の日常的にテレビゲームをプレイする、特にFPSやMOBAなどのゲームを24~27インチのディスプレイでプレイする、いわゆる「ガチゲーマー」の皆さんに焦点を当てています。彼らがなぜ目が疲れやすいのか、その原因と対策について詳しく解説します。

このようなゲーマーは、ディスプレイ全体を視野に入れつつ、細部までしっかり見るために、ディスプレイとの距離が顔から50~70cmと比較的近いことが多いです。

30代の方の場合(図①のようなイメージ)

30代の方など、まだ目のピントを合わせる力(調節力)が十分にある場合は、この距離でゲームをしても問題ありません。十分な余力があるため、よほど連続で何時間も連続でプレイしない限り、目の疲れを感じにくいでしょう。

図①30歳の人が「裸眼」と遠くが見えるメガネ(遠用単焦点)を掛けて見たときの明視域(はっきり見える範囲)遠くから近くまで余裕をもってはっきり見えているのがわかります

50歳に近づくとどうなる?(図②のようなイメージ)

しかし、50歳に近づくと、個人差はありますが調節力が大きく衰えてしまいます。ディスプレイ自体を見ることはできても、そのために目の調節力の半分以上を使ってしまう状態になります。これでは目に余力がなく、すぐに疲れてしまいます。

短時間のゲームならまだしも、長時間プレイしたり、仕事終わりにゲームをしたりする場合には、目に大きな負担がかかってしまうのです。

図②平均的な調節力を持つ50歳の人が遠く用のメガネ(遠用単)を掛けてディスプレイを見た明視域
ディスプレイの距離である50センチから70センチで調節力を半分以上を使っているため
負担がかかっているのがわかります

ゲーミングには「中近メガネ」がお勧め!

調節力が衰えてきているにもかかわらず、遠くを見るためのメガネ(遠用単焦点メガネ)をかけたままゲームをすると、目に大きな負担がかかることがお分かりいただけたでしょうか。では、どうすればこの問題を解決できるのでしょうか?

解決案①パソコンの距離に特化したメガネ

パソコンのディスプレイを見るのに最適な50~75cmの距離にピントが合うように調整されたメガネを作る方法があります。

この方法だと、ディスプレイは非常にクリアに見えます。しかし、その代わり、70cm以上の遠方や、スマートフォンなどの40cm以下の近い距離は、はっきり見えなくなってしまいます(図③のようなイメージ)。これでは外出時にも使えませんし、スマホを見るのも厳しくなります。

図③PCのディスプレイの距離50センチ~70センチに合わせたメガネの明視域
70センチ以上の遠方と40センチ以下の近方が見づらいことがわかります。

解決案②累進多焦点レンズの「中近タイプを使う」(特にお勧め!)

1枚のレンズに1つの度数しか入っていないメガネでは、調節力が衰えると、はっきり見える範囲(明視域)が狭くなってしまいます。

そこで開発されたのが、1枚のレンズの中に様々な度数が入っている「累進多焦点レンズ」です。

このレンズを使えば、はるか遠方からすぐ近くまで、すべての距離をスムーズに見ることができます(図④のようなイメージ)。50歳の方がこのレンズを使えば、40cm先まで無理なくはっきり見えることが分かります。

図④1枚のレンズにたくさんの度数が入っている累進多焦点レンズを使ったメガネを
図②と同じ人50歳の人が掛けた場合の明視域。
遠くだけでなく40センチまで調節力を使い切ることなく見えていることがわかります

累進多焦点レンズには、遠く・中間・近くのどの距離を重視するかで、様々なバリエーションがあります。その中で、ディスプレイの距離を見るのに特に適した設計のレンズが「中近(ちゅうきん)レンズ」です

遠近メガネ度数分布
中近レンズ度数分布
  • 中近両用と一般的な遠近両用レンズとの違い(度数分布のイメージ)
    一般的な遠近両用レンズは、遠くを見る部分(青い部分)が広く、パソコンを見る中間距離(緑の部分)は狭く、黒目の中心よりも下の方に配置されています。 一方、中近レンズは、パソコンの距離に当たる中間距離(緑の部分)が非常に広く設計されており、しかも黒目の中心部分など自然に見やすい位置に配置されています。これにより、目に負担をかけずに自然な姿勢でPCのディスプレイを長時間見ることが可能になります。

中近レンズは、長時間の車の運転や映画鑑賞には不向きですが、室内にいることが多いライフスタイルであれば、普段使いのメガネとしても十分活用できます。 眼鏡技術者として、調節力が低下した50歳以上のゲーマーの方には、この中近メガネが非常に有力な選択肢の一つになると考えています。

まとめ

この記事では、45歳以上のゲーマーが抱える目の疲労の原因と、その対策について解説しました。

一般的なゲーミングメガネでは対応しきれない、年齢による「調節力の衰え」には、「中近メガネ」が非常に有効な解決策です。

快適なゲーミングライフを送るためには、レンズの設計と、はっきり見える範囲(明視域)が非常に重要になります。ぜひ一度、中近メガネを試してみてはいかがでしょうか。

当店では、自身がゲーマーでもある1級眼鏡作製技能士がお客様一人ひとりの目の状態やゲームスタイルに合わせて最適なメガネを提案しています。

ぜひ一度ご相談ください。

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