オールイングラスとは
メガネ関連の記事をウェブで見ていると最近「オールイングラス」なるワードをよく見るようになりました。
どうやらタレントの高田純次さんが出ている人気番組「じゅん散歩」内の通販コーナーで紹介されたとのことで話題になっているようです。
どのようなものか眼鏡技術者的目線で調べてみました。
販売サイトに書いてある紹介文は以下のようになります。
広い視野でピントが合う! 新発想の老眼鏡オールイングラス。
ひみつはメーカー独自開発の累進多焦点レンズ。
世界三大メガネ生産地のひとつ福井県鯖江で作られたオールイングラデーションレンズと呼ば れる特殊なレンズ。
1枚のレンズの上から下に向かって滑らかに度数が変化。 上の部分は+1.5度、そこから一番下部分の+3.0度まで滑らかに度数が変わっていきます。
複数の度数を持つ多焦点レンズなので、視線を動かすことで手元から少しれた距離までピント が自然と合いやすい。
見たい距離の用途に応じて眼鏡を使いわける必要がなくこれ1本でOK.
目線の移動でピントが合うため、奥行きがあり、広くて自由な視界を実現。
目に優しい。紫外線とブルー光線をカット。
キズが付きにくいハードコーティングを採用。
コンタクトレンズと併用可。
幅広い老眼視力の方に対応するのでプレゼントにもおすすめ。
オールイングラス販売サイトより引用
どうやらレンズ上部に+1.50Dまたは+0.75Dの度数が入っている加入度数が1.50の累進多焦点メガネ(=1枚のレンズに複数の度数が入っているメガネ)のようです。コンセプト的には近々メガネをイメージしているのでしょうか?
どんな人におすすめ?そしてその欠点は?
「オールイングラス」は累進多焦点レンズの1種です。
累進多焦点レンズとは1枚のレンズに複数の度数が入っているレンズのことで、年齢を重ねてピントを合わせる力(=調節力)が落ちたとしても、1つのメガネで近くから遠くまで幅広い距離を見ることができます。
累進多焦点レンズは見る距離に応じて、メガネをかけ替えたり、外したりすることなく一本のメガネで済むようになるため人生の質を大きく向上させるほどの利点がありますが、一つ大きな欠点があります。
それは一枚のレンズに多くの度数を入れるためにどうしてもユレや歪みが発生してしまうことです。
そのため累進多焦点レンズはユレや歪みを極力レンズの端の方(周辺部)に集め、装用者の目に入らないようにフレームや一人ひとりのお顔に合わせてミリ単位でレイアウトを決定しフィッティングを行う必要があります。
度数が一つしかないメガネよりも遥かに高いレベルでライフスタイルや見たいものの距離に対応した度数決定や設計選択も重要になってきます。
度数設定が2タイプ(S+1.50~S+3.00とS+0.75~S+2.25)しかなく瞳孔間距離やレイアウトが固定のオールイングラスの場合、眼鏡技術者的には満足する見え方を得られるのはかなり限られた以下の条件を満たした方だけという欠点があると言えます。
「オールイングラス」がうまくフィットする方の条件
①両眼ともに近視・乱視・遠視などの屈折異常がなくほぼ正視
②瞳孔間距離がオールイングラスが設計で想定している数値にほぼ一致
③フレームの形状にフィッティングの必要がないほど顔がピッタリフィットしている
まとめ
いわゆる雑貨店や100円ショップなどで販売している「出来合い老眼鏡」の累進多焦点メガネ版であるオールイングラスを購入してもフィットする条件を満たす人はなかなかいないのではないと私は考えます。
またこの度数分布では条件がうまくあった人であってもかなり遠方がボヤケますので、紹介文にあるように「見たい距離の用途に応じて眼鏡を使いわける必要がなくこれ1本でOK」とはならないでしょう。
一方でオールイングラスのような近くから遠くまで幅広い距離を1本のメガネで見ることができる累進多焦点メガネは処方や設計、フィッティングを適切に行えば人生の質を大きく向上させる可能性があります。
ですのでオールイングラスがうまく見えなかったからといって、根本的な老眼対策につながる累進多焦点レンズを一生使わなくなるというのはもったいなさすぎます!
もちろんオールイングラスの一式9,800円より費用がかかってしまう可能性がありますが、眼鏡作製技能士などが在籍する信頼できる眼鏡店できちんとコンサルティングや検眼、フィッティングをして作ることをおすすめします。トライアルレンズなどで完成後の実際の見え方に体験することもできますので相談してみてはいかがでしょうか?
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