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最近増えている夜間、車のヘッドライトがまぶしさを訴える方
近年、夜間の車のヘッドライトの眩しさをご相談される方が増えています。
暗い状況でヘッドライトなどの強い光源を見ると光の周りの輪状の光やギラつき、いわゆるハロー・グレアを感じるというものです。
その背景として省電力の流れや技術の進歩により車のヘッドライトのLED化が関係しており
ちょっと前まではオプションだったLEDヘッドライトですが今では標準装備されている車種も多くなっています。
LEDヘッドライトはそれまでのハロゲンタイプより省エネルギー性と明るさを兼ね備えるなど多くのメリットがありますが、500nm以下の波長の短い光いわゆるブルーライトを多く含んでいるというデメリットもあります。
ブルーライトは散乱しやすい性質を持っているため、眼球の硝子体の中で乱反射を起こし夜間のヘッドライトが眩しく感じる方が多くなったと考えられます。
夜間のまぶしさ対策の難しさ
昼間のまぶしさ対策として以前から色の濃いサングラスが使われてきましたが、夜間運転用レンズはまぶしさの原因である光(=可視光線)をレンズに濃い色を付けてカットすればいいというわけには行きません。
なぜなら夜は暗いのでレンズカラーが濃すぎると見るために最低限必要な明るさまでカットしてしまい視力が低下してしまうからです。
まぶしさを抑えることは大切ですが、暗すぎて歩行者などが見えずに事故を起こしたりしまっては意味がありません。
夜用のレンズカラーはまぶしさを抑えつつ、明るさと視力をキープしなければならないという難しさがあります。
夜でも使えて、かつまぶしさを抑えるレンズカラーとは
それでは夜間でも十分に視力をキープでき、かつまぶしさを抑えるレンズカラーとはどのようなものでしょうか?
JIS(日本工業規格)では『視感透過率75%未満のレンズ:薄暮又は夜間時における運転用又は路上での使用の禁止』と規定されています。
つまり色の濃いレンズは視力が低下し危険なので使わないでくださいということです。
ここで大事なのは『視感透過率』はレンズカラーの濃さなどの表記に使われる『可視光線透過率』とは別であるということです。
例えば同じカラー濃度25%であるHOYAのキャリアカラーのMSBY25%とMSSY25%は『可視光線透過率』は表記のカラー濃度の逆数で同じ75%です。
しかし『視感透過率』で比較するとMSBYが74%で夜間運転不適合、MSSYは82%で同じ値にはなりません。一方MSSYのほうは視感透過率82%で75%以上のため夜間の運転でも使用できるレンズカラーとなります。
カラー名 | 視感透過率 | 運転適合 | 夜間運転適合 |
MSBY25% | 74% | ○ | ✕ |
MSSY25% | 82% | ○ | ○ |
なぜこのようなことになるかというと人間の網膜の感度は光の波長ごとに異なっており、最も感度の高いのは550nm付近とされています。『視感透過率』は人間の目の感度の高さに応じて各波長ごとに重み付けをしているので『可視光線透過率』と異なっているのです。
濃度が同じであっても視感透過率がより高いレンズカラーであれば夜でも使えて暗くなりすぎない、すなわち『夜間でも十分に視力をキープでき、かつまぶしさを抑えるレンズカラー』ということになります。
オススメカラー1 キャリアカラー MSSY25
当店では夜間まぶしさを強く感じる方にはHOYAキャリアカラー25%MSSYをおすすめしています。
その理由として
- HOYAの遮光レンズ「レチネックス」の技術をベースにまぶしさの原因である散乱しやすい500nm以下のブルーライトを重点的にカットしている。
- 感度の高い550nmの光線を中心に通すことで高い視感透過率をキープ。
- キャリアカラー自体がファッション性も考慮されたカラーのため、夜間運転のみならず普段使いの常用眼鏡としても使えなくもない。
- 単焦点はもちろん、遠近両用やアイアシストメガネを含めたHOYAのほぼすべての設計のレンズに適用できるため、使用者の様々な年齢・ライフスタイルに対応できる。
おススメカラーその2 より強力な防眩効果 NIDEK ナイトアシスト475
キャリアカラーMSSY25でも眩しいとの方には、NIDEK社の「ナイトアシスト475」も候補の一つになります。
これは医療機器やレンズ加工機のメーカーとして有名なニデックのコーティング部門が開発した夜間運転メガネです。
下の分光透過率表を見ていただけるとわかりますがMSSY25よりもよりピーキーな特性になっており防眩効果に特化しているのが特徴です。
そのためより強力なまぶしさを防ぐ効果があり視感透過率も86%と夜でも視力低下を抑えることができます。
MSSY25でもまだ眩しいという方にはこちらもお使いいただけます。
その一方でキャリアカラーのようにレンズメーカーが直接生産しているわけではないためレンズの種類は原則単焦点のみ、納期が長く高価、黄色味が強すぎて普段使いが難しいなどの欠点があります。
まとめ
以上で眼鏡作製技能士がオススメするレンズカラーを書かせていただきました。
ハロー・グレアなど暗いところで感じる眩しさは光の散乱の影響が大きいので、上記の散乱しやすいブルーライトを重点的にカットする今回ご紹介したレンズは効果的です。
ただし他のコラムでも触れていますが、ブルーライトカット系のコーティングやレンズカラーの効果の感じ方は個人によって大きく異なります。
また度付きメガネとして作製する場合、特に遠視系の方は屈折異常を矯正することでレンズカラーをつけなくても眩しさの感じ方が変わる人もいます。
そのため他の人の感想やウェブの書き込みだけで無く実際に来店しご自分で体験してお作りいただくことを強くお勧めいたします。
夜間に使われることをお考えでしたら実際に暗くなってからご来店いただくとより失敗が少ないでしょう。
また夜間運転だけでなくレーシック手術後や円錐角膜の方で慢性的なまぶしさに悩んでいる方でも効果がある場合がございます。
当店ではキャリアカラー各種、ナイトアシスト475のデモを完備しておりますのでお気軽にご相談ください。