コロナ禍が補聴器に与えた影響
人類に多大な影響を与えたコロナウイルス。多くの人命が失われ、経済活動も大幅に縮小するなど私達の生活に様々な影響がありました。
そして補聴器市場もその例に漏れず大きな変化がおこったのです。
補聴器には現在大きく分けて2つのタイプ耳穴型と耳掛け型がありますが、コロナ前までは耳掛け型のレシーバー分離タイプ(RIC=Receiver in Canal)が大きくシェアを伸ばしていきました。
しかしコロナ禍以降日本国内では真面目にマスクを装用している人が多い、かつメガネ装用者の割合も高い日本市場においてはいかに小型のRICタイプの耳掛け型とはいえ補聴器の上から更にマスクとメガネを掛ける煩わしさ、マスクを外す際に補聴器が脱落して紛失するのではという恐怖感から耳穴型補聴器のニーズが急激に高まったのです。
特に電池交換が不要の充電式耳型補聴器は爆発的に販売が伸び、いち早く販売したスターキー社は国内シェアを大幅に伸ばしたと言われています。
フォナックスリムの狙い

日本国内では爆発的に売れている充電式耳穴補聴器ですが、北米に本社があるスターキー社以外の欧州メーカーの動きはあまり積極的ではありません。
デンマークのGNヒアリング、ドイツにシバントスが最近出したくらいですがあまり強く推し出していないと思います。
欧州メーカーが充電式耳あな型補聴器に消極的な理由としては
①市場的要因
そもそも欧州ではもともとRICタイプ耳掛け補聴器が主流であること、またマスクを日本ほどしておらず、遠視系の人が多くメガネする人も少ないため耳あな式充電補聴器を開発しても売上が見込めない。
②ハードウェア的要因
大容量の充電式リチウムイオンバッテリーを内蔵するため、耳あな型補聴器の小型化に制限があり大型になる。また同じ理由で大型のベント穴が開けにくく、軽中度難聴の方で低域の聴力があまり低下していない方では使いづらい。
一般の消費者の方々は「耳あな型補聴器=目立たない」というイメージを持ってらっしゃる方が多いので注意する必要があります。ただ最近はワイヤレスイヤホンを装用して町を歩いている方もよく見かけますのでそこまで違和感を感じさせないかなという気もします。
そして今回のフォナックスリムは日本市場からの「フォナックも充電式耳あな補聴器ださないの?」という問いに関する一つの回答かなと思っています。
フォナックスリム概要
最大の特徴はその外観です。ぱっと見では補聴器のように見えません。小さな「棒」です。
分解したわけではないのでわかりませんが、今まで充電式に使用していたバッテリーではこのスリムな本体には収まりそうにないので
既存の充電式RICとは違う薄型のリチウムイオンバッテリーをしようしているのではないでしょうか?


この画像だと分かりづらいかもしれませんが
「幅」がかなり薄くなっています。
また今までの耳掛け型補聴器はレシーバーを交換したりすれば右耳用、左耳用を共用する事ができましたがスリムはフィット感を最優先にしてレシーバーの取り付け角度を人間工学を踏まえて7°左右でつけているため右耳用と左耳用がそれぞれ別になりました。

本体にはRとLの記載があります
外見は大きく変わりましたが聞こえに直結する内部のチップ(=コンピューター)は実績のあるルミティーチップを使用しておりレシーバーもマーベル世代以降のものと共通です。
もちろんフォナック独自のiPhoneだけでなくAndroidにも対応したスマートフォンとの接続性の良さも健在です。
フォナックスリムを実際に装用してみる
さっそく実機を装用してみました。
メガネも扱っている人間としてはメガネのモダン(耳に当たる部分)と同様に耳介上部の直線になっている部分に長く細くなった本体を乗せることで安定感と装用感の向上をはかっているのではと思いました。
幅が細くなっている分マスクやメガネとの同時装用との相性も良さそうです。
またあえて左右で違う形状としレシーバーの取り付け角度を傾けることで側頭部に沿うように補聴器本体が密着しやすくなっているのもフィット感の向上に繋がっているとも感じました。


このように通常のRICタイプ補聴器と比べると私を含め多くの方で装用感の向上が見込めるとは思います。
その一方でスリムが密着する耳介上部形状や側頭部のカーブなどは個人差が大きいので、合う合わないの相性もありそうです。
メガネの場合はモダンを熱して曲がりの深さなどを調整することができますが補聴器本体は曲げるわけにはいきません。
実際にデモ機を体験したいただき装用感をお試しいただいた上でのご購入をオススメいたします。
フォナックスリムまとめ
- 長所
- 多くの方で既存RICよりも装用感の向上が見込める。
- 既存の充電式RICや充電式耳あな型補聴器より目立ちにくい。

よほど耳元を注意してみないと気づきません。
- 短所
- 耳介や頭部の形状によって相性があるかも。またマスクだけメガネだけとの併用はともかくマスク+メガネとの併用はやはり煩わしい。
- 最低で50クラス、35万8000円からという価格。
現時点では価格面もあり必ずしもオススメとは言えませんが今後30クラスが出て価格がこなれてくれば十分に選択肢として有りだと思いますし
スリムが将来的には充電式RICタイプのスタンダードな形状になるのではないかと期待しています。
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