「値段が高い遠近両用レンズと、お手頃な遠近両用レンズ。一体何が違うの?」

お客様からよくいただくご質問です。現在、遠近両用レンズなどの累進多焦点レンズ(1枚のレンズに、遠くを見る度数から近くを見る度数まで連続的に変化させているレンズ)は、多くのレンズメーカーから様々な種類が販売されています。そして、同じ「遠近両用」という名前でも、グレードによって価格が大きく異なることにお気づきの方もいらっしゃるでしょう。

その価格差を生む最も大きな要素の一つが、レンズの「設計」です。ここでは、その設計グレードについて、できるだけ分かりやすくご説明します。

進化を続ける累進レンズの設計

遠近両用や中近両用といった、主に手元の見づらさを解消するために用いられる累進多焦点レンズが誕生してから数十年。その歴史は、まさに「より快適な見え心地」を追求するための設計改善の歴史でした。

初期の遠近両用メガネは、レンズ工作技術の稚拙さや光学設計ノウハウの無さなどもあり、レンズの揺れや歪みが大きく感じられるものもありました。「遠近両用メガネは、足元がグラグラして怖くて使えない」というイメージをお持ちの方がいらっしゃるのも、この頃のレンズを経験されたからかもしれません。

しかし、レンズメーカー各社は、そうした課題を克服すべく、「より揺れや歪みが少なく」「遠くも中間も近くも、自然に見える」レンズを目指して、長年にわたり開発競争を続けてきました。累進多焦点レンズの歴史はまさに設計改善の歴史といえます。

その結果、レンズ設計は飛躍的な進歩を遂げ、主に以下のグレード(設計の種類)に分けられるようになりました。一般的に、リストの上にあるものほど高品質な設計とされています。

  • 両面複合累進設計(最上位グレード)
  • 内面累進設計(高品質グレード)
  • 外面累進設計+内面補正(標準グレード)
  • 外面累進設計(基本グレード)

グレードが高いレンズほど、同じ度数や条件であれば、一般的に以下のような傾向があります。

  • 揺れや歪みといった違和感が少ない
  • 左右を見たときの視野が広い(特に中間距離や近方を見る際)
  • 慣れやすい


『ユレやユガミなどの違和感が少なく』
『水平方向の視野が広い』

傾向があります。

高品質なレンズほど、製造に手間とコストがかかるため、価格も上がります。累進レンズの価格の違いは、主にこのレンズ設計の違いによるもの、と考えていただいて差し支えありません。


画像左側 普及帯価格の遠近両用レンズ
画像右側 両面複合設計+インディビジュアル採用の遠近両用レンズ
レンズメーカーHOYAが公開しているレンズの性能比較画像
右側のレンズの方がはっきり見える範囲が左右に広いことがわかります
(S0.00 Add2.50で作成した場合)

少し注意が必要な点: 一般的に「両面設計」と呼ばれるものの中には、上記の「外面累進設計+内面補正」を指す場合があり、これよりも「内面累진設計」の方がグレードとしては上位になります。多くのレンズメーカーのハイエンド(最上位)モデルは「内面累進設計」または「両面複合累進設計」を採用しています。

※設計の名称はメーカーによって異なる場合があります。また、同じグレードの設計でも、開発された時期によって性能に違いが出ることがあります。

各設計グレードの特徴をもう少し詳しく

グレード4:外面累進設計

レンズの外面(眼から遠い側)に累進面(度数が変化する部分)を設けた、比較的初期からある設計です。2000年初頭頃までは、ほとんどの累進レンズがこのタイプでした。

あらかじめ累進面をつけた半製品(セミ材)を大量に在庫しておき、店舗からのオーダーが入ってから球面、乱視度数をレンズの裏面に研磨して付与する方法です。

グレード3:外面累進設計+内面補正

外面累進設計をベースに、見え方の質を向上させた改良型です。

違う点は外面累進が半製品から作る制約上、あらかじめ設定した基準度数から処方度数が外れた場合などに発生する収差(見え方のズレやボケ)を内面にフリーフォーム技術で研磨することで補正します。これにより、外面累進設計よりもスッキリとした視界が得やすくなります。

グレード2:内面累進設計

レンズの内面(眼に近い側)に累進面を設けた設計です。

加工機の進歩により可能になった、ドリルの様なカッターで自由にレンズ基材を切削するフリーフォーム技術で累進面を含め、レンズの内側を切削することで度数をつけていく方法です。

レンズの内側に累進面を配置することで、視野の歪みが軽減され、より自然な見え心地に近づきます。また、設計の自由度が高まるため、お客様一人ひとりの度数やライフスタイルに合わせた、よりきめ細やかな対応が可能になります。

レンズメーカーにとっても、多種多様な半製品レンズを大量に在庫する必要がなくなるというメリットがあり、近年急速に普及しました。

・グレード1:両面複合累進設計

HOYAが2003年採用したレンズの外面と内面の両方に、それぞれ役割の異なる累進面をフリーフォーム技術で組み合わせた、現時点で最も進んだ設計の一つです。

HOYAは2003年からこの設計思想を採用しており、内面累進設計のメリットである「揺れや歪みの少なさ」と、外面累進設計の持つ「視線を下ろした際のピントの合いやすさ」を両立させることを目指しています。

メガネのツチヤのこだわり
当店では、お客様に快適な視生活を送っていただくために、原則として「内面累進設計」以上のグレードのレンズをおすすめしております。

両面複合設計についてのコラムは↑コチラ

さらに進化するレンズ技術:「インディビジュアルレンズ」の時代へ

レンズ設計の進化は、レンズを加工する機械の進化と深く結びついています。特に「フリーフォーム加工技術」は、累進レンズの設計に革命をもたらしました。この技術が登場する以前は、あらかじめ累進面が加工された半製品レンズを在庫する必要があったため、設計や累進帯長(遠くを見る部分から近くを見る部分への移行部の長さ)のバリエーションには限界がありました。しかし、フリーフォーム加工によって、実質的に無限に近い設計バリエーションを生み出すことが可能になったのです。

近年、ハイエンド(最上位)のレンズ領域では、従来の設計改良だけでは「見え心地」の向上に限界が見え始めてきました。そこでレンズメーカー各社が注力しているのが、さらなる見やすさの追求のためにフリーフォーム加工技術を更に進めた「インディビジュアルレンズ(フルオーダーメイドレンズ)」です。

これは、お客様一人ひとりの度数に加え、選ばれたフレームとそのフレームをお顔に掛けた装用状態から

  • フレームのソリ角
  • 前傾角
  • 眼とレンズの距離

といった、極めて個人的なデータまで考慮して、レンズ設計をオーダーメイドで最適化する技術です。これにより、従来のレンズ以上に、その方にとって「本当に見やすい」メガネが実現しやすくなります。

もちろん、メガネのツチヤもこの最新技術にいち早く対応しています。iPadとAIを活用したHOYA純正のフルオーダーメイドレンズシステム「LLI(HOYA LENS INDIVIDUAL)」を、横浜市南区の店舗で唯一導入し、お客様一人ひとりに最適な「見え心地」をご提供しています。

スーツのように、メガネも採寸してフルオーダーメイドされる時代に

まとめ:レンズ設計は重要、でもそれ以上に大切なこと

ここまで、累進レンズの設計グレードについてご説明してきました。近年のレンズ設計の進化は目覚ましく、初期の累進レンズと比較すると、揺れや歪みの少なさ、視野の広さなどは格段に向上しています。

しかし、覚えておいていただきたいのは、メガネの「見え心地」はレンズのグレードだけで決まるわけではない、ということです。

あくまで同一人物に同じレンズ度数、同じフレームなど全く同一条件でメガネが作成されればハイグレード設計のほうがよく見えるということです。

どんなに優れた設計の高級レンズを使っても、それ以外の要素が伴わなければ、そのレンズの真価は発揮されません。それはまるで、最高級の食材があっても、調理する人の技術や知識、レシピが的確でなければ美味しい料理が完成しないのと同じです。

快適な「視生活」を送れるメガネをお作りするためには、以下のプロセスが非常に重要になります。

  • 丁寧なコンサルティング:眼鏡作製技能士など知識と経験を持つ検査員がお客様と時間をかけてコンサルティングを行う。お客様の生活スタイル、お困りごと、メガネに求めるものを深く理解します。
  • 精密な視力検査: 正確な完全矯正度数や調節力を測定し、両眼で見たときのバランスも詳細に確認します。
  • 適切なレンズ選択: 検査結果とコンサルティング内容に基づき、数あるレンズの中から最適な設計や度数を専門知識をもってご提案します。
  • フレーム選びとフィッティング: お顔に合い、かつレンズの性能を最大限に引き出せるフレームを選び、お顔に合わせて正確に調整(フィッティング)します。このフィッティング時の装用状態が、レンズレイアウト(レンズの光学中心の位置など)を決定する上で非常に重要です。

これらの工程一つひとつを丁寧に行うことで、初めてレンズの性能が活かされ、お客様にとって本当に快適なメガネが完成します。

当店では、特に遠近両用などの累進多焦点レンズをお作りする場合、お客様お一人につき、最低でも1時間以上のお時間をいただいております。「こんなに時間をかけて検査してもらったのは初めて」と驚かれることもありますが、最高の「見え心地」をお届けするためには、これだけの時間と手間をかけることが不可欠だと考えております。

そしてレンズ設計のグレードは、いいメガネを作る工程の構成要素の1つです。私も眼鏡技術者としてレンズ設計は大事だと考えますし、その優劣や蘊蓄(うんちく)にも大変興味があります。ただ快適な「視生活」を送れるメガネを作るには設計の優劣だけではないことをご理解いただけると幸いです。

スマートフォンやパソコンの長時間使用など、現代の生活は眼にとって厳しい環境とも言えます。加齢に伴う眼の機能変化(いわゆる「アイフレイル」)に対して、眼鏡技術者が専門知識をもって正しく製作した累進多焦点レンズは、皆様の快適な視生活を支える大きな力になると確信しています。

遠近両用レンズについて、ご不明な点やご不安なことがございましたら、どうぞお気軽にメガネのツチヤにご相談ください。

国家資格「1級眼鏡作製技能士」が対応させていただきます。お気軽にご相談ください。

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